阿波おどり
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新聞で見る阿波おどり

昭和編
新聞記事
徳島新聞
1998年8月2日掲載
執筆者 石川文彦
映画化

踊り子役県民殺到

 徳島毎日新聞の新年号のページ数は昭和十四(一九三九)年、十五年が二十八ページと戦前のピーク時の半分以下になり、十六年はわずか十六ページ。このころになると華やかな紙面は姿を消し、銃後美談や「名誉の戦死」欄がだんだん幅をきかすようになった。

 ■復活望む声■

 四月一日付同紙には、スパイ防止上の理由から徳島市街の写真撮影が禁止されたこと、お神酒にさえ不自由している時代に「節句に泥酔」していたとして警察に四人が検束された話が載っている。
またタバコを買う場合は空き箱を持ってきて、とある。それでもこの夏には「そろそろ阿波踊りを復活しては」の声が各方面からあがった。

 七月十五日付徳毎は、県警察部の後藤保安課長にインタビュー。後藤は「目下のところは許さない方針で進んでゐる。モシ縣民總意(けんみんそうい)によって盆おどりを行はしめることが妥當(だとう)だといふ様な事由でも生じたらまた考慮するが…」とこたえている。結局この年は“農漁村の健全な盆踊り”については許可、「阿波踊りと一般的に言はれているきちがい踊の類は依然許可されない」こととなった。

 ただこの年には久しぶりに阿波踊りが行われた。
四月に東宝映画「阿波の踊子」(山上伊太郎原作)のロケが徳島市内であったためだ。こんなこともあって夏に踊り復活の声が出たのだろう。これまで映画の背景などに阿波踊りが撮影されたことはよくあるが、本格的な劇映画化は初めてだった。
監督は当時、東宝のドル箱監督といわれたマキノ雅広。主演は長谷川一夫、入江たか子で、高峰秀子、沢村貞子、清川虹子といった豪華キャストが総出演した。


映画「阿波の踊子」ロケシーン。徳住橋をバックに長谷川一夫(故人・先頭)らが踊っている

 徳住橋や旧県庁のあった賀島屋敷前などでロケを行ったが、弁当持参のファンが続々と詰め掛け、ロケ隊が悲鳴を上げたほど。撮影現場だけでなく「(一行の)宿舎の前に子供を連れた母親が、家庭を明けた主婦が、仕事を捨てた者が、道一杯に交通を妨げ、時に玄関にまで入る」(徳毎)ありさまだった。

 ■芸妓も練習■

 富田町や内町の芸妓(げいぎ)を中心に、近所の若い男女もエキストラとして踊りに加わったが、希望者が殺到した。あこがれの銀幕に登場できるとあれば、当然のことだったろう。ただ十一年以来五年ぶりの阿波踊りとあって、芸妓の中でさえ満足に踊れない者もいて、猛練習したそうだ。

 徳毎では五月一日から映画「阿波の踊子」の脚本を十一回にわたりそのまま連載。ロケの様子を写した写真を毎回添えた。封切りは五月二十二日、県内では珍しく京阪神と同時だった。関係者を招いての試写会が午前中に行われたが、そのころから東宝両国館前は黒山の人だかり。十四年には同じく徳島を舞台にした「阿波狸合戦」が大当たりし、新興キネマを立ち直らせたといわれたほどだったが、それに次ぐ人気を集めた。


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